しまね留学インタビュー

2024.06.25

島根県立津和野高校 阪本 孝太朗さん

阪本 孝太朗さん

・ 山梨県出身
・ 家族の提案でしまね留学を決意

阪本 孝太朗さん

日本遺産をもっとたくさんの人に伝えたいと、
たった2人で高校生ガイドを立ち上げた阪本孝太朗さん

山口県との県境に位置する津和野町。四方を山々に囲まれた豊かな緑の中に赤い瓦屋根が広がっている独特な風景が訪れた人の心を奪います。かつて津和野藩として栄えたこの場所は日本遺産の「津和野百景図」をはじめとする歴史が息づく場所でもあります。山梨県からしまね留学生として訪れた阪本孝太朗さん(令和5年度卒業)は、津和野が持つ歴史の奥深さに興味を持ち、日本遺産をたくさんの人に伝える特別ガイドとして活躍。最初は環境の変化から一歩引いていたけれど、徐々に自分らしさを発揮し、部活動では副部長を務めたという阪本さん。3年間の印象的なエピソードから将来目指す道までお話を伺いました。

インタビュー中の風景

普通の公立高校に通うのは、何かが違う気がした

 

――まずは阪本さんが津和野高校に留学するに至った経緯を教えてください。

 

阪本さん:僕は私立の小中一貫校に通っていたのですが、そこがすごく特殊な学校だったんです。例えば、体験学習や“プロジェクト”という独自の授業が多くて、その中で”ものづくり”をするのがすごく好きで、楽しんでいました。そして実際に高校進学を考えるようになった時、地元にある公立高校に進学するのは何かが違う気がしたんです。もっと「自分のしたいことができるところがいいな」と親に話した時に、勧めてくれたのが「しまね留学」でした。この話の前から、島根県で地域留学が盛んに行われているのは知っていて、せっかく行くなら他県からもたくさんの生徒が来ていて、盛り上がっている島根がいいなと思ったんです。

 

――なぜ津和野高校を選んだのでしょうか。

 

阪本さん:オープンスクールに参加して決めました。実は、最初に津和野にくるまではどんな環境なのか全く想像できなくて、少し渋っていたんです。でも、実際に学校に通っている高校生と話したり、環境を見たりしていたらどんどん惹かれていって。森がすごく好きなので、自然が多いのもよかったですね。

 

――なるほど。それじゃあ、環境の良さが決め手ですか?

 

阪本さん:いえ、決め手になったのは、「グローカル・ラボ」という部活動です。2016年に発足した「地域系部活動」と呼ばれる新しいタイプの部活動なんですが、津和野高校では地域の行事や畑仕事など、まちに出て活動していく中で、興味を持ったことに対して主体的に取り組めるのが魅力でした。先輩方にお話を聞いたら、みなさん自分たちのやりたいことがあって、それを実現できていた。「すごいな!」と胸が高鳴りました。人や環境など魅力がたくさんある街ですが、フィーリングというか、直感で「グローカル・ラボに入りたい!」と思ったんです。

 

 

――すごく前向きなスタートですね。ちなみに、留学にあたって不安だったことはありますか。

 

阪本さん:親元を離れて暮らすとか、寮生活というよりは、学校生活の面が少し不安でした。というのも、通っていた小中学校が特殊だったので、テストや宿題もなくて。そういうところで9年間過ごしていたので、公立の学校になじめるかは不安でした。みなさんがよく心配される寮生活は、小学校の頃から団体合同のキャンプなどにも参加していたので、不安はなかったですね。

 

――その不安は解消されましたか。

 

阪本さん:1年生の時は必死だったからかよく覚えていませんが、今はもう公立高校のスタイルにも慣れていますね。寮は年齢の違う先輩と同室で、いろんなお話が聞けたのはすごくよかったです。

 

津和野にある日本遺産をたくさんの人に知ってほしい

 

――3年間で一番熱心に取り組んだことはなんですか。

 

阪本さん:津和野には幕末の津和野藩の風景等を記録した「津和野百景図」というものがあり、日本遺産にも登録されています。しかし、僕が1年生の終わりの頃に当時の教頭先生から、日本遺産の認定が取り消しになる可能性があると聞いて、高校生なりに何かできないかと思い、それからずっと取組を続けています。日本遺産は全国に約100あるのですが、新しい候補地が挙がる中で、「今後の計画が具体性を欠く」「事業が民間に波及していない」などいくつか問題点が指摘されています。何年間でどれだけの問題点を改善し成長できるかが、日本遺産として残る条件です。

 

――具体的にはどんな取組をされたんですか。

 

阪本さん:津和野百景図など日本遺産を含めた街のことや歴史のことをガイドしています。他にも津和野町日本遺産センターという場所があるのですが、そこの特別外部スタッフとして定期的に通い、館内で案内をしています。あと少しで卒業なので、後輩に引き継いでいけたらいいなと思っています。

 

 

――それで、日本遺産認定取り消しは免れそうですか。

 

阪本さん:2022年の段階では、条件付きですが継続となりました。ただ、これからも査定は入るみたいですね。自分たちの行動が貢献できたかはわかりませんが、認定取り消しを免れたことは嬉しかったです。

 

成長のきっかけは、津和野で出会った大人たち

 

――これから卒業までにがんばりたいことはありますか?

 

阪本さん:今は受験に向けて準備を進めています。具体的な将来の夢は決まっていませんが、学科的には地域振興や観光みたいなところに興味があります。

 

――いいですね。目指す道が決まったり成長したりというきっかけはあったんでしょうか?

 

阪本さん:津和野高校に来て、学生同士だけじゃなくて大人と普通に話せるようになったのが一番大きいです。地元の大人にはまだまだ子ども扱いされることも多いですが、津和野では初めて会う学外の人とも話せるようになりました。最初のころは右も左もわからないので傍観することに徹していたので、同級生から「当時はオーラがなかった」とか「話し合いの時にも声が聞こえなかった」と言われるんです。2年生の時に部活動の副部長になってからは、本来の自分の姿で活動できるようになりました。

 

 

――3年間で印象的なエピソードがあれば教えてください。

 

阪本さん:先ほどお話しした「津和野百景図」の活動は、同じく「しまね留学」で奈良から来た1人との、合計2人で活動をしていました。イベントや「SHIMANEみらい共創CHALLENGE」にも参加したのですが、僕の相方は発表があまり得意ではなかったので、分担がうまくいかないこともあって最初は大変でした。でも、徐々にお互いの得手不得手を認め合い、相方は行動力があるからとりあえず道をつくって、僕がそれを整備していくみたいな役割分担に落ち着きました。喧嘩まではいかないけど、どちらも不満を持っている時期も正直ありました。それでも向き合いつつづけたからこそ今は認め合い、大学生になっても付き合っていきたい大切な存在になったと思います。

 

――「津和野百景図」でたくさんの見どころを知った、阪本さんのお気に入りスポットは?

 

阪本さん:殿町通りの夜の景色がすごく好きです。もともと風情のある通りですが、ライトアップされていてすごくきれいですね。それから、太鼓谷稲成神社の鳥居のところも夜の景色が美しいですし、神社から見る街の景色も好きです。ライトといっても都会ほどの明るさはないので星空も見えるんですよ。津和野は夜がすごく素敵なので、ぜひ見てほしいですね。あとは流鏑馬(やぶさめ)で有名な鷲原(わしばら)八幡宮は、すごく落ち着いた雰囲気で気分転換になるので休日に散歩をしたりしています。 永明寺(ようめいじ)という県指定有形文化財に指定されたお寺には森鷗外のお墓があって歴史を実感できますし、いろんな人に森鷗外の話を聞けたりして、隠れ家的オススメスポットですね。

 

 

何にでも興味を持てる好奇心旺盛な自分に出会った

 

――卒業後にやってみたいことはありますか?

 

阪本さん:中学生の頃から教育に関わりたいと思っていて、高校卒業後の進路を考えた時も最初は教育関係で考えていました。でも、教育って学校の先生以外にも様々な選択肢があり、いろんな人に「違うことを学んで、いつでも教育の方に戻ってこられるよ」と言っていただいたので、まずは自分が学んでみたい専門分野を模索しています。最初津和野に来た時は、自然とか竹林問題とかに取り組みたいと思っていたのですが、今は歴史や地域づくりに夢中になっていて、自分は何にでも興味を持てるんだと気付いたんです。だから将来についても視野を狭めるのではなく、いろんなことにチャレンジして本当にやりたいことを見つけたいです。

 

――これから津和野との関わりはどうなっていきそうですか。

 

阪本さん:卒業した後も、時々訪れたいと思っています。生まれ育った山梨を飛び出して津和野に来たことで、山梨の新しい魅力や新しい世界が見えたんです。だから、次にもう一つ違う場所に行けば津和野の違う一面が見えるかもしれないし、人生においても自分の中で軸っていうか芯ができていくのかなと思っています。

 

これからしまね留学を目指す方へ

ここには安定はありません。全部が新しい世界だし、とても刺激が多い毎日が待っています。自分の成長のために、そんな刺激的な毎日を前向きな気持ちで楽しみたいと思える人に、ぜひ「しまね留学」をオススメしたいです。新しい場所、新しい人の中で学ぶということは、自分の得意不得意が浮き彫りになることでもあります。自分のことをよく知り、長所を伸ばしていくためにもいい経験になると思います。

学校情報

島根県立津和野高等学校

〒699-5605
島根県 鹿足郡津和野町 後田ハ12-3
TEL:0856-72-0106

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