地域の人の声
2025.03.17
農業、祭、イベント。この町でしかできない、めいっぱいの経験 を。
農事組合法人・石原里田・代表理事/奥出雲町で子ども食堂を企画運営する「さんさん会」代表
地域の人の声
2025.03.17
農業、祭、イベント。この町でしかできない、めいっぱいの経験 を。
農事組合法人・石原里田・代表理事/奥出雲町で子ども食堂を企画運営する「さんさん会」代表
和久利健さん
島根県奥出雲町出身。地元の農事組合法人・石原里田代表。田 植えや稲刈り、畑仕事体験などの運営や、地域のイベント企画 などを行っている。島根県立横田高校から「和久利さん、いろ いろな活動しておられるから、しまね留学生の受け入れをして もらえませんか?」と相談がきたことをきっかけに、およそ6 〜7年前からしまね留学生の受け入れをスタート。農作業に限 らず、そば打ちや餅つき体験、子ども食堂や祭・イベントのサ ポートなど、しまね留学生にこの地ならではの体験の場を提供 している。
設立から約10年となる農事組合法人・石原里田では、地域の高齢化により活用できなくなった田畑の耕作権 を継承。およそ10haの田んぼと1.6haの畑で、地域の特産品・仁多米をはじめ、えごま、そば、白ネギ、唐 辛子など様々な作物を育て、さらに田植えや稲刈り、そば打ち、餅つきなどの体験イベントも行っていま す。横田高校のしまね留学生との交流も深く、農作業はもちろん、地域のお祭りやイベントへのしまね留学 生の参加もサポートしています。「近くも遠くもない“いい加減”な距離だから、話しやすいのかもしれませ んね」と笑う和久利さん。親元から離れたしまね留学生にとって、頼りになる家族のような、何でも話せる 友人のような存在の和久利さんに、しまね留学生との交流について話を伺いました。
――横田高校のしまね留学生と、主にどんな交流をしていますか?
和久利健さん(以下、和久利さん):横田高校から、しまね留学生の受け入れを相談をされたのが始まりで、今はしまね留学生達から「今日は何か作業ありますか?」などと直接連絡がきてやりとりしています。具体的には、田んぼに入って作業を手伝ってもらったり、畑に入って土を触ったり野菜をつくったり、そば打ちを体験させたり。観光客や小学生を対象とした体験・イベントがある時は、手伝いに来てもらったりしています。
――印象的だったエピソードはありますか?
和久利さん:しまね留学生が地元のおばちゃん達にまぎれて農作業をしていた時、「たばこ(※出雲弁で“休憩をする”の意)するか」など、おばちゃん達の出雲弁が最初ちんぷんかんぷんだったみたいで。でもそのおしゃべりしている雰囲気が楽しいと喜んでいたんです。何回かやりとりするとおばちゃん達とお互いに名前も覚えて、「柿ができたけん、お土産にあげるよ」なんておばちゃん達から声をかけられるほど親しくなって。田舎のおばちゃん達と話したり、畑や田んぼに入って泥に触れたりといった体験を通して、農作業に限らず、人間関係や、人や地域とのつながりも学んでいるみたいでした。
――農作業以外には、どのような活動がありますか?
和久利さん:私が商工会支部長として主催している地域のお祭りの準備や当日の出店を、しまね留学生にも手伝ってもらっています。しまね留学生達の生まれ育った街にも地域のお祭りはあるようですが、知らない人ばかりで不安もあり参加したことがなかったみたいで。大喜びでした。お客さんが少ない時間帯はお祭りを自由に楽しんでもらって。ちょうどやっていた神楽を見て「はじめてみた」と目を輝かせていました。
和久利さん:また、令和4年から、親が仕事などで不在の小中学生宅に出来たての弁当を配達する「子ども食堂」というのをスタートしたんです。子ども達に仁多米や地元の素材の美味しさを味わって欲しいのと、何よりほかほかの食事を届けたくて。そのお弁当づくりや配達などの活動も、しまね留学生が手伝ってくれています。
――しまね留学生にとって、この地での体験にはどんな意味があると思いますか?
和久利さん:畑作業にしても、お祭りにしても、子ども食堂にしても、都会にいて「したい」と思ってもすぐできないことに、チャレンジできる環境なんです。私も「体験をさせてあげる」というより「スタッフとして一緒に動いてもらう」ようにしています。それが一番、得るものがあるんじゃないかと思うんです。
和久利さん:これまで出会ってきたしまね留学生の中には、中学校まで学校が苦手だった子などもいました。でもその子達がここに来て様々な体験をして、表情がガラッと変わったりするんです。お父さん、お母さん達がびっくりするほどに。勉強自体は都会も島根も大きくは変わらないのに、彼ら、彼女らが横田高校を選ぶのは「いろいろな体験がしたいから」なんじゃないかと思うんです。そういうしまね留学生からは、限られた時間の中でできる限りの経験をしよう!という意欲を感じます。僕はただ、その場を提供しているだけ。しまね留学生自身が自分の力で、何かを得ていくんです。
――しまね留学生達と深く関わっていると、卒業するのが寂しいですね。
和久利さん:たった3年間だけど、卒業しても「いつでもうちに帰ってくればいいけん。引っ越しも手伝うよ」と言ってるので、心配しなくてもきっと会いに来てくれると思います。みんながいろいろな道に進んでいくのを見送るのは、さみしいより嬉しいが勝りますね。
これからしまね留学を目指す方へ
奥出雲という場所でしかできないこと、都会ではできない様々な経験をしてください。農作業に限ったことではなく、社会の中での人との関わりや、地域の中で暮らすということ、いろいろな世界があることを学んで欲しいです。私はそのための機会と舞台を、たくさんつくっていけたらと思います。
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