卒業生の声

2024.10.18

雲南での1年間の留学生活があったからこそ、今の私がいる

島根県立三刀屋高等学校と島根県立大東高等学校の高2留学生

中村紗花さんと高地麻央さん

中村紗花さん(写真左)
・大阪府の私立高校出身
・しまね高2留学の1期生として、雲南市の三刀屋高校で高校2年生の1年間を過ごす
・現在は立命館アジア太平洋大学に在籍(2024年秋時点)

高地麻央さん(写真右)
・東京都の私立高校出身
・しまね高2留学の3期生として、雲南市の大東高校で高校2年生の1年間を過ごす
・現在は高校3年生で、大学受験を控えている。(2024年秋時点)

中村紗花<span>さん</span>と高地麻央さん

OG二人が語る雲南での留学生活

中村紗花さん(以下、中村さん)と高地麻央さん(以下、高地さん)は、高校2年生の1年間を島根県雲南市で過ごしました。中村さんはしまね高2留学の1期生として大阪から島根県立三刀屋高等学校(以下、三刀屋)へ、高地さんは3期生として東京から島根県立大東高等学校(以下、大東)へ留学。現在、中村さんは立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の1年生、高地さんは高校3年生として大学受験を控えています。そんなお二人に、今回はOGとして、今改めて高2留学を振り返ってどのように感じているかを伺いました。

中村紗花さん高2留学中の記事はこちら
高地麻央さん高2留学中の記事はこちら

 

 

雲南市山王寺地区の棚田の景色

 

「日本一チャレンジにやさしいまち」雲南市への留学

 

ーー高2留学に挑戦しようと思ったきっかけを教えて下さい。

中村さん:私自身がコロナ禍世代で、やりたいことになかなか挑戦できない日々を長く過ごしました。「高校生になったのに何もできていない、何か動いてみたい」という感情が沸々と湧いていたことを覚えています。そんなときに、学校で高2留学のチラシが配られて「これだ、面白そう!」と思って、親と相談して挑戦することにしました。

 

高地さん:私の場合はもともと地方や田舎に関心があり、高校進学時に3年間の地域留学も検討したのですが、3年という期間は私にとっては少し長いかなと感じ、高校2年生での1年間の留学をすることにしました。東京での学生生活に少し違和感を持っていて、環境を変えてみたいと思っていた部分もありますね。

 

ーーそんな背景があった中、数ある高2留学の受入れ地域の中から、「雲南市」を選んだ理由は何でしょうか。

高地さん:景色を見てピンときたということがひとつの理由としてありますね。自分の住みたいと思っていた田舎のイメージにピッタリきたのが、雲南市の景色でした。

 

中村さん:私は学校だけではなかなか差が分からなくて、受入地域の自治体HPまですべて調べていました。その中で雲南市の掲げる「日本一チャレンジにやさしいまち」というキャッチコピーに心を打たれ、「ここだ!」と思いましたね。

 

高地さん:大東の見学に行ったときに、自分のやりたいことを先生に話したんです。それに対して、先生が「ぜひ挑戦して、大東に新しい風を吹かせてほしい」と肯定してくれ、自分らしくいられる場所だなと感じたことも大きいですね。人があたたかいと感じました。

 

 

雲南市加茂地区でのお祭りの花火に行った時の写真(高地さん提供)

 

大人のやさしい応援があるから、やりたいと思ったことを形にできる

 

ーー「日本一チャレンジにやさしいまち」というキャッチコピーが出てきましたが、実際に留学生活の中でどんなことにチャレンジしたのでしょうか。

中村さん:雲南市には「雲南スペシャルチャレンジ(以下、スぺチャレ)」という仕組みがあります。チャレンジしたい思いがある人を市が応援してくれる制度で、高校生もエントリー可能なんです。私はこの制度を利用して、雲南市の良さを伝えるためのPR活動にチャレンジしました。コーディネーターの方に沢山助けていただいたこともあって、高校2年生というまだまだ視野が狭い中でも挑戦をやり遂げることができたと思います。スぺチャレでは、周囲の生徒たちもそれぞれに面白いチャレンジをしていて、そうした周囲からの刺激を受けながら挑戦できたことも良い経験でした。

 

高地さん:私にはお笑い芸人のたかまつななさんの「社会を変えられると思う子供たちを増やしたい」というテーマのプレゼンをたまたま目にして、興奮し感情が高ぶったという経験がありました。それまでの自分は、何か思うことがあったとしても、「どうせ私がやっても意味ないな」と行動に移していませんでした。プレゼンを聞いた後は、やらずに諦めるのではなくて、まずは行動に移してみようと思えるようになったんです。大東にも同じように「どうせ…」と感じてしまっている同世代も多いんじゃないかと思い、たかまつななさんを大東に呼んで講演してもらうイベントを企画し、無事やり遂げることができました。自分も変わることができたから、島根の同世代にも何かきっかけのようなものが提供できていればいいなと思います。

 

中村さん:すごいね。高地さん含め、後輩のこうした挑戦の話を聞くと、自分の高校2年生のときにももっともっとできることはあったんじゃないかって思いますね。でも、そう思えるということは、自分自身も高校2年生のときから着実に成長しているからだとも思います。

 

 

雲南スペシャルチャレンジのスタートアップ時の写真(中村さん提供)

 

 

ーー留学中にチャレンジをしたことで感じた自分の成長がどのようなものだったか、具体的に教えてもらえますか。

中村さん:はい、「こうしないといけない」とか「これができる人がすごい」とか、社会の目を気にしていることが多かったですが、“中村紗花”という一人の人間としてイキイキと生きるということができるようになったと思います。

 

高地さん:新しいことに挑戦することへのハードルが格段に下がったと感じていますね。思うだけでなく、行動に移すことができるようになりました。そして、いつも途中で投げ出すことが多かったのですが、やり遂げる力が間違いなく身に付いたと思います。

 

中村さん:雲南市のチャレンジにやさしい環境と応援してくれる地域の人たちがいるからこそ、高地さんも言うように、“したい”を形にできるようになったんだと思います。

 

 

雲南市大東町のガーデニングショップで遊んでいるときの写真(高地さん提供)

 

雲南での1年間があったからこそ、今の私がいる

 

ーーちなみに、お二人は同じ雲南市でも、三刀屋と大東とそれぞれ別の高校に留学されましたが、それぞれの高校や地域の特徴や印象的だったことも教えて下さい。

中村さん:学校で言えば、大東は普通科ですが、三刀屋は総合学科です。総合学科だからこその授業や企業と連携した学びは特徴だと思いますね。テレビ取材で地元企業を訪問したりしたことは印象に残っています。あとは、寮に住んでいたのですが、学校から寮の近くまで帰ってくると、近所の人たちが「おかえり」って言ってくれるんです。都市部に住んでいた頃には、近所の方とこうしたコミュニケーションはなかったので、最初は戸惑ったのですが、今思えばとてもあたたかくて心地よかったと言えますね。

 

高地さん:表現が難しいのですが、学校も地域も“普通”だったと思います。そのことが私にとっては良かったとも感じているんです。大東のほかに検討していた高校もあったのですが、そこはすでに高校魅力化がかなり進んでいて、有名になっている学校でした。校内も県外生だらけで、きっと学校や地域にはすでに固定観念というものもなくなってきているんじゃないかと思います。大東を選んだことで、日本の田舎の“普通”や“日常”をそのまま感じることができたことは大きいです。

 

 

三刀屋高校バレー部の県大会時、選手をサポートする中村さん

 

 

ーー高地さんはそんな日本の田舎の“普通”を感じたことで、今後の進路はどのように考えるようになったのでしょうか。

高地さん:はい、大東で過ごしたことで、やりたかったチャレンジができたり、人のあたたかさに触れられたり良い経験ができた一方で、地域の課題も見えたと思っています。交通の不便さや経済格差からくる「機会格差」があるのではないかと感じています。こうしたことは、ニュースやネットの記事では知っていたけど、イメージを持っていただけでした。でも、1年間の留学を経て実体験としてこうした差を感じることで、人がどこにいても「自分らしい選択」ができる、お手伝いのようなことができたらなと思っています。

 

ーー具体的にはどのようなお手伝いなのでしょうか。

 

高地さん:名前をよく聞く職業しか将来の選択肢がないと思っていることは、本当にもったいないと思います。解決策のひとつとして、いろんな生き方や働き方をする大人と接する機会が多くあるといいのではないかと考えています。そういった機会づくりや出会いの場づくりのようなことができたらなと思いますね。

 

ーー素敵ですね。中村さんは後輩の言葉を聞いて思うことはありますか。

中村さん:高地さんの話を聞いていると、なんだかジーンと来ちゃいますね。色んなことに奔走していた浪人時代や留学時期のことを思い出します。私は大学生活ではリーダー的なことをやる機会や、オープンキャンパスで登壇して話したりする機会が増えていて、こうした今の自分をつくってくれたのも、島根での1年間があったからこそじゃないかなと思っています。

 

 

冬の雲南市大東町の景色

 

 

高地さん:中村さんの言うように、島根での1年間は本当に大きくて、留学を終えて直後はただただ「やり遂げたな」という感覚だったのですが、日に日に“島根愛”が増してくる感じがあるんです。何を考えるにしても「これ島根でできないかな」とか「これ島根でやりたいな」と考えるようになっている自分がいます。

 

中村さん:良い思い出ばかり蘇ってきますよね。雲南や島根の人たちは、本当にあたたかくて、私を一個人として認めてくれるし、かかわってくれる。私にとっては、心の底から生きている心地が感じられる大切な場所です。

 

 

大学のプロジェクトでの韓国研修・アンケート調査時の写真
(中村さん提供)

 

 

これからしまね留学を目指す方へ

中村さん:迷っているなら行くべきだと私は思います。価値観はきっと変わるし、自分の人格までも変わると思っています。是非、挑戦してみてください。
高地さん:行くって判断するのはすごく難しいことだとは思うけど、留学に行くことで新しい自分に出会えると思います。

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