しまね留学インタビュー
2025.03.05
島根県立浜田水産高校 関 蒼太朗さん
しまね留学インタビュー
2025.03.05
島根県立浜田水産高校 関 蒼太朗さん
関 蒼太朗さん
・ 広島県出身
・ 幼少期から海や海洋生物に興味を持ち、学校で配布された地域みらい留学のパンフレットを見て浜田水産高校へ
「海に関する仕事がしたい」幼い頃からの夢と
ブレない信念を胸に大海原へ漕ぎ出す関蒼太朗さん。
山陰地方屈指の漁港を有し、広く美しい日本海がもたらす水産品が豊富な町として知られる島根県浜田市。伝統芸能である石見神楽が大切に受け継がれるこの町を、関蒼太朗さん(令和6年度卒業)は、自らの学びの舞台として選びました。広島県の似島という、人口およそ700人弱の小さな島で暮らしてきた関さんは、物心ついた時から海や海の生き物が大好き。そんな関さんに、浜田水産高校を選んだ理由や海の魅力、大きな経験となった「神海丸」での乗船実習などについてお話を伺いました。
大好きな海や海洋生物について、思う存分学べる環境を探して
――関さんがしまね留学するに至った経緯を教えてください。
関さん:父が釣具屋をしていたんです。私は釣りはしないのですが、人が釣りをしているのを横で見ながら育ったのもあり、幼い頃から海や海洋生物に興味がありました。「将来は海に関する仕事に就きたい」と考えていた頃「水産高校」という存在を知りました。中学3年生の春に学校で配られた地域みらい留学のパンフレットの中から浜田水産高校を見つけ、行きたいと思うようになりました。
――数ある高校の中から、なぜ浜田水産高校を選んだのですか?
関さん:実家のある広島から距離的に近かったことと、島根県という土地に元々興味があったこと、オープンスクールの時の学校の印象が良かったことです。あと遠洋航海実習ができる水産高校が、全国的に意外と少なかったんです。また、浜田の海には6月頃になると、台風と海流に乗って本来はこの地には生息していない南の魚がやって来ます。死滅回遊魚とか季節回遊魚と呼ばれるのですが、そこにも惹かれました。
何より、生まれ育った瀬戸内海にはない「うねり」が日本海にはあります。あと海の透明度が高い!10mとか20m下まで見えることに感動しました。漁もできて生物学も学べて、地形的・地質的にも魅力的、全てが揃っていたのが浜田水産高校でした。
果てしない大海原と、ミリ単位の世界
――信念を持って突き進んだ3年間、特に印象的だったことは?
関さん:やはり2年次に行われた「神海丸」での乗船実習です。ハワイ沖でマグロを獲ったり、モールス信号を習ったり、ホノルルに寄港したり。そしてそんな洋上での充実した日々を、中国新聞に記事として寄稿させていただきました。その記事の総集編が「神海丸航海日誌」として冊子になっています。このような貴重な経験が出来たことはもちろん、その経験を記録として残せたことは大きな財産です。乗船実習以外でも、大型船に備え付けられていた救命艇に由来する「カッターボート」という手漕ぎの船を漕いだり、トビウオ漁をしたり、普通科の高校ではできない経験をたくさんしてきました。
――関さんのつくる「骨格標本」がしまね海洋館アクアスに展示されるそうですね。
関さん:子どもの頃から遊びに来ていた、中国・四国地方最大級の水族館・しまね海洋館アクアス(以下、アクアス)で、まさか私が展示をする日が来るなんて思ってもいませんでした。私は漁も好きですが、海洋生物の研究も好きで。今はイシダイとヒラマサの骨格標本を作っています。ピンセットとナイフを使って魚の肉を細かく削げるだけ削いで、塩素系の洗浄剤を薄めた液に漬け込みます。あまり液に漬け過ぎると傷んでしまうので、最初のピンセットでいかに肉を削げるかが勝負。脂が少なくて骨が硬い魚などは扱いやすいんです。
奥から「ショウサイフグ」「アカムツ(ノドグロ)」「アカアマダイ」
――魚への愛とリスペクトをひしひしと感じます。標本に挑戦したい魚はいますか?
関さん:いつか挑戦してみたいのはリュウグウノツカイです。私たちがやっているのは簡易の骨格標本ですが、学術的なのものを作ろうと思ったら、一度全ての骨をバラしてから組み立てる作業が必要なんです。リュウグウノツカイを一度バラバラにして自分で完全なものを作ってみたい。深海の魚はすごくやわらかくて、難しいと思うんですが、時間が許されるならばいつか挑戦してみたいですね。
マダイ(頭骨)
数々の経験と、数々の縁の先に見た「ゆるぎない夢」
――学校外の地域の方との交流はありましたか?
関さん:1年生の終わり頃から浜田城資料館が主催する「高校生学芸員」に参加したんです。高校生が集まって自分で設定したテーマについて研究し、発表するんですが、そこで物の調べ方や発表力、人と関わるスキルが身に付いたと感じます。またその時に中国新聞の黒田さんという方と出会えたからこそ、中国新聞への記事の寄稿や、冊子「神海丸航海日誌」が生まれました。また、アクアスの方との出会いも大きいです。元々、アクアスのボランティアに参加したりしていたのもあり、今回の骨格標本の展示につながったんだと思います。人との「縁」の大切さを実感しました。学校外の活動ですが、それらは3年間の中でも貴重な経験となりました。
――人との出会いや高校生活を経た上で、関さんの今の夢は?
しまね留学を通して、海に魅せられ、研究職に就きたいという意思がより強くなりました。将来は「化学合成生態系」と呼ばれる生態系の研究をしたいと考えています。海底には火山ガスが吹き出てたり、高温の水が吹き出たりする場所があるんです。そこにはガスの成分を酸化してエネルギーを得る生き物が生きていて、さらにその生き物を食べる生き物もいる。光の届かない海の底の生態系に惹かれました。これは子どもの頃からぼんやりと持っていた夢ですが、浜田水産高校での3年間を通して、明確なビジョンになりました。海も好きですが、実は地質にも興味があるので、好きなものが全て重なって今があります。他にもやりたいこと全てをひっくるめて、将来は海洋生物研究者になりたいです。
「ベニツクガニ」
しまね留学を通して得た「勉強」以外の大切な学び
――学校と海以外で、地域のお気に入りのスポットなどはありましたか?
かつて浜田藩主が住んでいた、浜田城跡です。今は公園になっていて、本丸からは浜田の市街地が一望でき、船の出入りや海の様子も観察できるんです。春になれは桜が満開で、市民の憩いの場になっています。浜田の歴史と風土と人が感じられる場所です。また、アクアスや浜田港で水揚げされた新鮮な魚がいっぱいの「はまだお魚市場」も、もちろん好きです。あと、休みの日はサイクリングで、国指定天然記念物に指定される石見畳ヶ浦の千畳敷に行ったりもします。貝や鯨の化石があったり、潮溜まりでいろいろな魚が泳いでたり。地元ではパワースポットや心霊スポットとしても知られているみたいですが、自分は何の先入観も無く、昔からあの場所の地質に興味を持っていたんです。
お気に入りスポットのアクアスで、一般の方に向けた説明会を開催
――しまね留学前と今で、変わったと感じることはありますか?
しまね留学前より、積極的に新しいことに挑戦できるようになりました。オンラインで韓国語の講座を受けてみたり、大学の体験講義を受けに松江市に行ってみたり。昔の自分なら物怖じしていたようなことにもチャレンジできるようになりました。
――しまね留学に対する満足度と、得たものはなんですか?
大満足です。成功も失敗もありましたが、反省はあっても後悔はありません。3年間の島根生活を通して、数え切れないほどの経験ができたこともさることながら、たくさんの「縁」ができました。1つの縁がまた新しい縁につながり、今の自分があると感じます。シンプルなことですが「縁」を大事にしたいと、改めて深く感じた日々でした。これからも島根は第二の故郷です。
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これからしまね留学を目指す方へ
幼い頃から、いろいろなものが好きで好きで好きで。あちこち手を伸ばしていたからこそ今があります。どんな道に進むのであれ、自分の「好き=軸」と周りとの「縁」を大事にしてください。それだけあれば楽しく生きていけるんじゃないかと思います。
学校情報
島根県立浜田水産高等学校
〒697-0051
島根県 浜田市 瀬戸ヶ島町25番地の3
TEL:0855-22-3098
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