保護者の声
2025.05.20
学校も地域も自然も。全てを全力で楽しんだ3年間の先に
島根県立吉賀高校
保護者の声
2025.05.20
学校も地域も自然も。全てを全力で楽しんだ3年間の先に
島根県立吉賀高校
東京都から島根県立吉賀高等学校で3年間を過ごした鈴木健太さん(令和6年度卒業)の母・章子さん。「普通の高校生活を送るよりおもしろいんじゃないかな?」とお母さんがすすめたしまね留学を通して、離れて暮らすからこそ感じること、地域から学んだこと、3年間を経てのお子様の変化などを伺いました。
ーーしまね留学を知ったきっかけは?
鈴木さん: 長男の高校受験の時に「地域みらい留学」のチラシを見かけ、私が関心を持ったのがきっかけでした。長男は興味を示しませんでしたが、次男・健太の受験時に改めてその話をすると「おもしろそう」と興味を持って。ちょうどコロナ禍だったのもあり、オンライン説明会が盛んだったので、それをいかして全国のいくつもの学校を見ました。その中で、本人が一番しっくりきたのが吉賀高校でした。
ーー全国から吉賀高校を選んだ理由は?
鈴木さん:パンフレットとオンライン説明会で興味を持ち、はじめて現地に行ったのは中学校三年生の時のオープンスクールでした。島根県も吉賀町も全くの未知でしたが、自然豊かな環境に好印象を持ちました。吉賀高校に決めた一番の理由はサッカーのできる環境が整っていたことです。中学では野球部に所属しつつも、クラブチームでサッカーも続けており、本人には高校ではサッカーをしたいという思いがあったんです。さらにサンフレッチェ広島のコーチが指導に来ると知って、いよいよ本気になりました。個室の寮があったのもポイントです。全国の高校を見ましたが、個室のある寮は少ないんです。
ーー東京の港区から島根県吉賀町へ。環境の違いへの不安は?
鈴木さん:男の子だからというのもあってか、不安なことがないか聞いても「別にないよ」としか言わなくて。これは離れていても近くにいても同じかもしれませんが。実際に現地に行くと、最初は親の方が「ここで大丈夫かな」と心配にもなりました。私も夫も自然豊かな田舎育ちなので、田舎の良さも不便さも分かるんです。ただ、息子にとっては今までコンビニやカラオケに行ったり、電車でお台場に遊びに行ったりするのが当たり前の環境だったのに、全く異なる環境に一人で行くことに、親の方が心配になりました(笑)。でもいざ学校が始まると生徒の3分の1くらいは関西、関東など県外出身者で、思った以上に多様性があったんです。あと、現地の高校魅力化コーディネーターさんがすごく丁寧に気を配ってくださって。心配事があったらすぐ相談できたり、報告もこまめにしてくださったので、送り出した後の方がむしろ安心感が高まりました。
ーー学校生活や寮生活への不安はどうでしたか?
鈴木さん:学校生活については、最初は少人数だからこそ人間関係がうまくいかなかった場合のことや、将来の進路はどうするんだろう?などと、私は不安を感じていました。ただ、地域の方々や生徒のみなさんが想像以上に優しく、自然に溶け込めるよう工夫されているのを感じたんです。寮では地元食材を使った食事が毎食いただけて、しかも地元のお米も野菜もとても美味しくて。分からないことは寮の先輩に聞きながら自分でやっていたみたいです。病気やケガの際にそばにいてあげられないことが最大の不安でしたが、3年間で迎えに行ったのは一度だけ。風邪もひきませんでした(笑)。
ーー地域の人とのつながりはありましたか?
鈴木さん:都会では、地域の人と関わるといってもせいぜい近所の床屋さんくらいで、限られた人間関係の中で過ごしていましたが、吉賀町では町の人がみんな知り合いのような感じです。地域の人たちが自然に挨拶を交わす、それが新鮮だったみたいです。「人と人のつながりの大切さ」を3年間で体感していました。
ーー具体的にどんなつながりがありましたか?
鈴木さん:例えば地域のお祭りで焼き鳥を焼いたり、田植えや稲刈りなどのボランティアに参加したり。本人もすごく楽しかったみたいです。「手伝いにきてくれてありがとうね」と地域の人に声をかけられたことを、嬉しそうに話していました。吉賀町では神楽を見る機会も多くて、神楽の衣装を着せてもらったり面をかぶらせてもらったり、「水源祭」という地域の伝統的な神事ではわらの龍を背負うなど、貴重な体験もさせていただいたみたいです。
吉賀町には「サクラマスプロジェクト」という、学校と地域が一体となって学びや体験を支える教育の取り組みがあるそうです。「吉賀町での家族」のような存在ができて、一緒にバーベキューをしたり、どこかに連れて行ってもらったりしました。地元で暮らす人たちに直接いろいろ教えてもらえるのはとてもありがたかったです。
地域の祭りで焼き鳥を焼く様子
田植えのボランティア
水源祭の様子
ーー高校選びの決め手になった、サッカーはどうでしたか?
鈴木さん:
公立高校のサッカー部の中ではピカイチに恵まれた環境なんじゃないかなと思います。高校のすぐ近くに立派なサッカー場があって、3年生の時には寮がサッカー場のすぐ隣になり、窓を開ければグラウンド!本人が心から楽しんでいるのを離れていても感じました。平日はサッカー、週末はボランティアや地域行事に参加し、毎日がとても充実していた様子でした。写真も定期的に送ってきてくれていました。都会で友達と遊びに行っても、写真は送らないですよね(笑)。
ーー「都会で遊びたい!」などなかったですか?
鈴木さん:それが、なかったんです。カラオケや遊園地がなくても、田舎は自然全てがエンターテイメントだったみたいで。雪が降るのも、高津川で遊ぶのも、都会ではできない経験でした。そういえば、しまね留学での3年間を経て、家の手伝いを積極的にするようになったんです。「洗濯やろうか?」と声をかけてくれたり、重い荷物を持ってくれたり。地域の方々に温かく迎えられ「ありがとう、助かるよ」と声をかけていただく経験を重ねたことで、自己肯定感が育ち、人への思いやりや、自然と手を差し伸べる気持ちが育ったんだと感じています。
ーー不安の一つに上げていらっしゃった「学力・進学」面では変化がありましたか?
鈴木さん:中学校までは勉強もスポーツも「そこそここなせる」くらいの感じでした。でも吉賀高校に入ってから、結果的に成績が伸びたんです。自信がつき、学ぶことが楽しくなったのが大きいんだと思います。4月からは京都の大学の「政策科学部」へ進学するんですが、吉賀高校が力を入れている「アントレプレナーシップ教育」や地域ボランティアを通じて、地域課題や地方創生に関心を持つようになったのがきっかけみたいです。将来は島根や吉賀町に、自分の知見を還元したいと話しています。もし、しまね留学をせず都会の学校に通っていたら、そもそも地方・地域に目が向くことはなかったと思います。
ーーこれから「しまね留学」をする生徒の保護者にメッセージを。
鈴木さん:高校ごとに特色があるので、オンラインで全国の学校を見れたのはとても良かったですが、実際に現地に行ってみないと分からないこともあるので、説明会だけで判断せず現地を見ることの大切さを感じました。また「今の環境から逃げたい」というマイナスの選択ではなく、本人が前向きに「選んで行く」ことで、このしまね留学の制度はより効果を発揮するんだと思います。
送り出してしまえば、心配はあるものの、今はLINEやZoomなどで生存確認もできますしね(笑)。机上で心配するよりも、子どもの可能性を信じて一歩踏み出すことが大事だと実感しました。私自身も、近くにいると学力的なことに目がいきがちでしたが、しまね留学の3年間を通してそれが全てじゃないと思うようになりました。子どもが自分で選び、伸びていく姿を見守りたいと思います。
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