保護者の声

2024.06.28

引っ込み思案な子が大きく変化し、親も成長した江津高校の3年間

島根県立江津高校

わが子を送り出す保護者はいろいろと心配がつきないもの。親戚や知り合いもいない未知の土地であればその不安はさらに募ります。島浦祐奈さん(令和5年卒業)は神奈川県から島根県に留学し、島根県立江津高等学校(島根県江津市都野津町)で3年間過ごしました。母・雅子さんは「娘が行きたいと言うなら応援したいけど、不安はありました」と当時を振り返ります。不安が解消されていった過程や、先生や地域のホストファミリーさんのサポート、祐奈さんの成長などについて伺いました。

 

 

過密な学校に息苦しさを感じ、のびのび過ごせる少人数制の高校を希望

 

ーーしまね留学をどこで知りましたか。

 

島浦さん:神奈川県の学校は生徒数が多く、娘は環境が合わないと感じていたようです。中学校から「地域みらい留学」の合同説明会のチラシを持って帰り、「参加してみよう」ということになりました。最初は「気になってるなら行く?」ぐらいの軽い気持ちでした。

 

ーー突然のことでお母さんも驚かれたのでは?

島浦さん:びっくりしました。娘は自分の気持ちを言葉にするのが苦手なタイプでした。そんな子が「誰も知り合いがいない土地に行きたい」と言いだしたので、さすがに「大丈夫なのか」と不安になりました。でも、もともと突拍子もないことを言ったりやったりする子ではあったので、「自分から選んだのだから失敗してもいいか」という気持ちで送り出しました。本人の気持ちが動いたのであれば尊重したいですしね。

 

ーー江津高校を留学先に選んだきっかけは?

島浦さん:島浦さん:合同説明会に参加する前、事前にもらったガイドブックをしっかり見て、当日巡るブースをいくつか決めていました。一番気になっていた学校はすでに満席になってしまっており、待ち時間にほかのところも見てみようということに。そこで最初に行ったのが江津高校のブースでした。

部活動に神楽愛好会があるのもポイントだったようです。事前にチェックする中で、神楽がある地域の学校はいくつかピックアップしていました。あとは少人数制であることですね。

 

先生方や地域の人の思いやりのおかげで自分らしく過ごす

 

ーー親として不安だったことは?

島浦さん:環境面では、江津高校は女子寮がなく、女子の県外生を受け入れた実績がなかったのが不安要素でした。さすがに私が一緒に移住するわけにはいきませんし、これは無理だと……。駄目もとで電話してみたら、先生方が下宿先を見つけてくれました。一般のご家庭で、オープンスクールで江津を訪問した際にはお家を見せてくださったり、学校からの距離を確認させてもらったりと、とても良くしていただきました。生活費がどれぐらいかかるか見当がつかないのも不安要素。でもお家に伺った時に金額をご提示いただいて安心しました。

 

ーー入学してお子さんと離れてしまうのは寂しかったのでは?

島浦さん:入学式の後、駅で別れてからLINEで「置いていかないで」と何度も送ってきたのは、今思い出しても涙が出ます。でも初日から周りの子がグループLINEに入れてくれて、帰りには下宿先に友達を連れて帰ったそうです。すぐに仲良くなれて本当に良かったです。

 

ーー入学した年はちょうどコロナ禍が始まった時期でしたよね。

島浦さん:そうなんです。コロナと同時に学校生活がスタートして、入学してまもなく休校に。でも、すぐに友達ができていましたし、学校側も祐奈が住み慣れてない下宿先に居続けることを心配して、休校期間中も特例で日中に学校の図書室を開放してくれました。人とのつながりも周囲からの配慮もあり、特に苦痛はなくむしろ満喫していたようです。寂しがって頻繁に電話やLINEをしてくるかと思っていましたが、早々に連絡が来なくなりました。

 

ーーそのころは帰省もなかなか難しかったのでは。

島浦さん:感染予防のため、下宿先に戻る前にホテルでの待機期間を過ごす必要もあったりと精神的にも負担でした。また、私は介護の仕事をしているので感染予防のため県外へ行くことが難しく、なかなか江津に行けませんでした。学校側が柔軟に対応してくださって、進路相談や個人面談などはZoomで行うことが多かったです。

 

島根で成長した我が子に感化され、お母さんも一歩前進

 

ーー3年間江津で過ごした祐奈さんに、どんな変化・成長を感じましたか。

島浦さん:なんかもう〝仕上がっちゃった〟感じですね。自分で考えられるし、選択できるし、家族に接するときも伝え方がすごく大人です。 見ていて親の方が反省するぐらい。また、第一子だったということもあったせいか私は過干渉気味でした。中学で息苦しい時期を迎えてしまったことに少なからず影響していたかなと思うぐらい、いろいろと先回りをしたり確認したりしていました。今は一人の大人として接することができます。下の子に対してもあまり手をかけないようになりました。命の危険など深刻な問題になりそうなときに察知できれば、それ以外は大丈夫だなというスタンスです。

 

ーー送り出した側のお母さんの方も、ちょっと成長したということですね。

島浦さん:そうですね。気づかされることが多く、娘が頑張っている姿を見て、私も勇気づけられました。それまではパートタイムで働いていて、持っている資格を更新せずにそのままにしていましたが、もう一度更新するために勉強して、今はそれを活かして常勤で働いています。

 

 

ーー祐奈さんは大学ではどのように過ごしていますか。

島浦さん:大学では地域創生学科を選んでいて、地域のイベントに出たりいろいろ活動しています。サークルはジャズ研究会で、ウッドベースの演奏に力を入れています。イベントがあるときや長い休みの期間には江津に行っています。大学の友達を島根に連れて行く機会もあるようです。

 

ーーこれから「しまね留学」をする生徒の保護者にメッセージを。

島浦さん:3年間も知らない土地に行かせるのは心配でしょうし、本人も行きたい気持ちがなければ長く感じるかもしれません。そこはよく話し合った方がいいと思いますが、すごくいい経験ができるのは確かです。同僚にも子どもが「しまね留学」をした人がいて、話を聞いていると「どこへ行っても本当に良くしてもらえるんだな」と感じます。そういう意味では心配いらないですね。いろいろな世界を見て、いろいろな人に会う経験を経て、考え方が変わると思います。私の娘も自分の中で「これがやりたい」というものがなかったのに、島根に行って神楽をしたり、学校で地域活性部を立ち上げたり、積極的に活動していました。お子さんに「島根に行きたい」という思いがあればぜひ。

 

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