しまね留学インタビュー

2024.07.24

島根県立飯南高校 中條屋 健さん

中條屋 健さん

・愛知県出身
・母の勧めで「しまね留学」に興味を持ち、大学進学実績を見て飯南高校へ

中條屋 健さん

温かい環境の中で、「自分でも何かできるんじゃないか」と、
副会長として活躍した中條屋健さん

島根県の中南部、中国山地の山あいに位置する飯南町。県内でも有数の高原地帯だからこそ、夏は涼しく、冬には美しい雪景色を見ることができます。四季によって様々な表情を見せてくれる豊かな自然が、訪れた人の心をつかみます。愛知県から県立飯南高校に留学した中條屋健さん(令和5年度卒業)は、「人とは違う何か」を求めて、「しまね留学」に参加。島根でできた仲間や先生、コーディネーターにホストファミリーと、いろんな人に囲まれて、生徒会の副会長、副寮長、イベント実行委員長など「自分にしかできないこと」に挑戦することで着実に成長。第一志望の大学への切符だけではなく、社会で生きていくための力を手にした中條屋さんにお話を伺いました。

 

 

「何か人と違うことがしたい」と地元を飛び出し島根へ

 

――まずは中條屋さんが飯南高校に留学するに至った経緯を教えてください。

 

中條屋さん:中学3年生までは、愛知県にある地元の高校に進学するつもりでした。転機になったのは、地元にある高校のオープンスクールに参加したこと。朝早い時間に満員電車に乗って学校に行き、部活をして家に帰る…という生活が想像できてしまって。中学校生活とあまり変化がない3年間に「面白そうじゃないな」って感じたんです。そんな時、母に勧めてもらったのが「しまね留学」でした。自分も何か人とは違うことがしたいと思っていたので、「絶対参加したい!」と強い気持ちで応募を決めました。

 

――それでも、県外の高校に行こうと思うのはすごいですね。

 

中條屋さん:小学生の時も、子どもたちだけで参加するキャンプとか大好きだったんです。自然も好きだし、スキーも昔からしていて、地元から飛び出して何かをするのが好きだったみたいです。僕は島根県には行ったことがなかったので、住んでいる場所とは全く違う地域に行ってみるのってすごく楽しそうだなって思っていました。

 

――なぜ飯南高校を選んだのでしょうか。

 

中條屋さん:最初は別の高校に行こうと思っていたんです。中3の時に釣りにハマって、「海の近くにある学校なら毎日釣りができる!」という夢みたいな生活を思い浮かべていました。志望校を変えたのは、大学進学を意識してから。進学実績で行きたい大学がある高校にしようと思い、中3の10月に飯南高校と矢上高校に見学に行きました。その時に飯南高校の校舎から見える山の景色に圧倒されてしまって。僕の地元は、田んぼはあるけど、山が見えない。今でも毎朝、山の風景が見えるのすごいなと思いますね。特に寮の窓から見る景色がキレイなんです。それから、当時の教頭先生とお話をして、授業内容や進路サポートについて熱心に教えてくださって、大学進学の進路指導も充実していたのが決め手になりました。
他にも、スキーが好きだったのでスキー部があること、「生命地域学」や「生命地域ラボ」という独自の取組があって、自分のやりたいことができるのも魅力でした。正直、不安は一つもありませんでしたね。

 

 

中学時代は考えられなかった、リーダーとしての自分

 

――3年間でがんばったことはありますか。

 

中條屋さん:3つあります。1つ目は部活動、2つ目は生徒会の副会長、3つ目は地域に出て活動する「生命地域ラボ」の活動です。

 

――生徒会の副会長ですか。すごいですね。

 

中條屋さん:もともと生徒会に入っていなかったですし、最初は立候補するつもりはなかったんです。でも、先生やいろんな人が声をかけてくれて立候補を決めました。選挙の公約はSNSで飯南高校の魅力を発信すること。今まで高校として公式のSNSをしていなかったので、最初は先生方も乗り気ではなかったのですが、独学で企画書を作って職員会議で議題にあげてもらいました。企画が通ってからは自分たちで文章を考えてSNSを更新していましたね。今は次の代に交代していますが、後輩には「もっと注目されるコンテンツで活性化したい。僕みたいなしまね留学生に興味のある人は絶対に見る」と伝えたいです。僕は運よく「しまね留学」のことを知ることができましたが、母がニュースを見ていなかったら、僕は今ここにいないんです。そう考えたらPRが足りていないと思ったし、飯南町の地域の人の良さだったり、飯南高校にすごくいい学びがあるということだったり、それをもっと伝えたいと思うようになりました。

 

 

――3つ目に挙げていただいた「生命地域ラボ」の活動はどうですか。

 

中條屋さん:「しまね留学」を決めてから、積極的に地域に出たいという気持ちがありました。ホストファミリーという里親制度を使って、地域の行事に参加したり、稲刈りなどの農作業をさせてもらったり、いろんな活動に参加できました。特に印象的なのは実行委員長として企画・運営に挑戦した「サマーツアー」。県外から8名の中学生が参加してくれて、2泊3日のサマーキャンプを体験してもらうのですが、その中で飯南町の魅力を感じてもらえるように、メンバーとイチから話し合いました。4ヶ月くらいの準備期間で、スケジュールや時間配分、アポイント、プラン作りなど生徒とコーディネーターだけで作り上げる、貴重な経験でした。

 

――中学の時もリーダーをすることは多かったのですか?

 

中條屋さん:ソフトテニス部で部長はしていましたが、生徒会の副会長なんて考えられませんでした。実行委員長などいろんなリーダーを並行して進めるのは能力的にもキャパシティ的にも、昔の自分だったら難しかっただろうなと思います。

 

地元にはなかった、温かい雰囲気が背中を押してくれた

 

――充実した3年間を通して、ご自身の成長を感じることはありますか。

 

中條屋さん:すごく主体的に動けるようになりました。それから、多面的に物事を考えて、多様性を受け入れられるようになりましたね。あとは寮暮らしをしているので、身の回りのことは自分でできますし、副寮長として寮の課題があれば解決に向けて何をすればいいのかを考えるなど、社会で生きていくうえで必要な力が総合的に身に付いたと思います。

 

――そんな風に変われたのは、どうしてだと思いますか?

 

中條屋さん:飯南町や飯南高校の雰囲気ですかね。すごく挑戦しやすい環境なんです。地元の中学校は全校生徒800人くらいの大規模な学校だったので、飯南高校とは雰囲気が全然違うんですよ。ここは温かい雰囲気があって、ちょっとずつ「自分は何かやれるんじゃないか」というふうに前向きに考えられたんだと思います。

 

――地元にいる保護者やお友達の反応はどうですか?

 

中條屋さん:夏休みに帰省した時に地元の友達の親御さんに会って、今、島根県の高校に通っていると話すと驚かれましたね。自分の家族も多分成長を感じてくれていると思います。留学前は家ではダラダラしていましたが、今は寮の広いお風呂の掃除に比べたら、実家のお風呂掃除なんて楽勝なので。身の回りのことや家事を手伝うたびに喜んでくれていますね。

 

――素敵ですね。3年間、先生方のサポートはいかがでしたか?

 

中條屋さん:関西大学への進学を目指していたのですが、僕が目指していた入試だと高校2年生の冬までに英検2級合格が必須条件だったんです。大学への出願時期から逆算すると、英検の受験機会は2回だけ。とにかく必死になって勉強しました。1次試験はリスニングやライティングが中心なので基本的に自学を行い、先生方には作文の添削などをメインにサポートしてもらいました。しかし、2次試験は面接試験があるので、全て自分で完結することはできません。英語科の先生が面接対策をしてくださったのですが、他のお仕事もあるのにマンツーマンで、しかも1・2時間かけてじっくり対応してくれて、本当にありがたかったです。英検に無事合格できた後も、大学入試へ向けた志望理由書の添削をはじめ、様々な面でアドバイスをいただきました。担任の先生はもちろんですが、コーディネーターもわざわざ僕の志望理由書を見るために学校まで来てくださったり、面接指導をしてくれたりと、今までの学校生活では考えられないくらいの充実した環境が整っていて、これこそが飯南高校の強みだなと思います。

 

 

――先生たちが1つになってサポートしてくれていますね。部活動での思い出はありますか?

 

中條屋さん:スキー部に所属していたのですが、1年生と2年生の時に島根県のスキー連盟が開催している希望制のスキー合宿に参加しました。長野県にある菅平という場所で1週間もスキー漬けの毎日。同じスキー部の仲間も何名か参加していましたし、いい思い出ですね。

 

本当の家族みたいな大人に会えた、特別な場所

 

――飯南町のお気に入りスポットがあれば教えてください。

 

中條屋さん:一番はやっぱり、飯南高校から見える山です。雪が降った時には本当にきれいで、冬の時期は毎日のように美しい雪景色が楽しめるんですよ。中学3年生の時に初めてこの景色を見てからずっと変わらず、この風景はお気に入りですね。

 

 

――素敵ですね。では、飯南町の好きなところは?

 

中條屋さん:飯南町にはホストファミリーの家があるんですけど、その家があるロケーションが「ザ・田舎暮らし」を体験できる環境で、すごく豊かな気持ちになれるんです。本当に圧倒されます。ホストファミリーは1年生の時にアンケートがあって、自分に合う方を紹介していただけるのですが、僕の場合は60代ぐらいのご夫婦。お子さんも、お孫さんもいるのにわざわざ縁もゆかりもない自分を受け入れて、おいしいご飯を作ってくれたり、「伝統行事に参加してみないか」と声をかけてくれたり、農作物が採れた時には持ってきてくれることも。ほかにも「田植えがあるけん、来ないか」みたいに気軽に連絡をくれて、農作業でコンバインや田植え機を実際に運転させてもらえて、初めての体験ばかりですごく刺激的で面白かったです。本当に親切な方で、自分の子どものように接してくれるんですよ。

 

――温かいですね。それなら、ホームシックなどはなかったんじゃないですか。

 

中條屋さん:ありがたいことに人間関係には恵まれていましたが、1年生の時は、たまに家に帰りたくなることはありましたね。飯南町は大好きだけど、ちょっとだけ地元が恋しくなるみたいな。ゴールデンウィークに地元に帰るんですけど、そこから夏休みまで、そして9月から冬休みまで…と帰れない期間が長いので。でも寮の仲間とはすごく深い関わりになりますし、仲良くなれるので、徐々に寂しさを忘れていきました。寮って楽しいですよ。

 

――寮での一番の思い出を教えてください。

 

中條屋さん:お風呂が広くて、先輩後輩関係なく、お風呂でいろんな話をして盛り上がる時間が好きです。学校の話や先生のこと、部活の話に、うまくいかなくて落ち込んだ話。すごくいろんな話をしています。こんな環境があるから、寮生同士も仲良くなれるし、他県から参加する人にも「心配しないで」と伝えたいですね。

 

 

これからしまね留学を目指す方へ

僕は3年前に「しまね留学」を選んでよかったし、価値のある3年間を過ごせたと思っています。ちょっと他の人と違うことをしてみたいという人、思い描く高校生活と現実にギャップを感じている人、「挑戦したい」という気持ちはあるけど、挑戦できるものが見つかっていない人には、「しまね留学」を勧めたいです。そして入学後は、主体的にいろんな体験をすること。そうすれば地域の良さが見えて人とのネットワークも広がり、いい3年間になりますよ。

学校情報

島根県立飯南高等学校

〒690-3401
島根県 飯石郡飯南町 野萱800
TEL:0854-76-2333

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