島根県立三刀屋高校 楠部夕夏さん

部活動と寮生活で磨いた人間力と自立心
周囲の支えを感じながら3年間を駆け抜けた楠部夕夏さん

島根県立三刀屋高校(同県雲南市)には、全国高校総体(インターハイ)32回出場、全国選抜大会10回出場など輝かしい実績を誇る女子ソフトボール部があります。中学時代から強豪チームでプレーすることに憧れていた楠部夕夏さん(令和2年度卒業)は、中学時代に同校のソフトボール部の試合を見て、広島県からの「しまね留学」を決意したといいます。厳しい部活動の練習や寮生活を通じて感じた自身の成長と、支えてくれた周囲への感謝について、担任を務めていた福原大樹先生とともに語ってもらいました。

ソフトボール部の雰囲気に惹かれ入学を決意

――三刀屋高校に進学しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

楠部夕夏さん(以下、楠部さん):中学生の時からソフトボールに取り組んでいたのですが、中学2年生の夏に地元の近くでインターハイの試合がありました。そこで島根県代表として出場していた三刀屋高校のソフトボール部を見て、「自分もここでプレーしたい」と思ったのがきっかけです。その後はオープンスクールに参加するなど、三刀屋高校について自分で調べるようになりました。

――ソフトボールで高みを目指すという思いの強さを感じます。最終的に三刀屋高校を選んだ決め手は何だったのでしょうか。

楠部さん:試合を見ていて、三刀屋高校には強さだけじゃない「泥くささ」があるという印象を受けました。個性的なチームで、雰囲気がすごく良いと感じたことを覚えています。他校ももちろん考えましたが、チームの印象の良さが決め手になりました。

福原大樹先生(以下、福原先生):ソフトボール部の部員は、みんな明るいイメージですね。また、それぞれ非常に濃い個性を持っています(笑) 部員が自分らしさを出してチームを作っているという印象がありますね。

楠部さん:(笑)

――入学した当初のことを振り返ってください。

楠部さん:入学式を終えてすぐに部活の練習があったのですが、寮に荷物を運ぶなど準備に追われ、あわただしかったことを覚えています。それでも、寮や学校生活、友達関係や部活動のことなど、楽しみな気持ちでいっぱいでした。

福原先生:初めて楠部さんに会ったのは1年生の体育の授業でした。礼儀正しく、キビキビしているという印象でした。ソフトボール部に憧れて入学したことは後で知ったのですが、その時から他の生徒とちょっと雰囲気が違うなと思っていました。

楠部さん:(笑)

――当時と今の楠部さんの様子を比べられて、どのような違いを感じますか。

福原先生:最初の印象は、「キビキビ行動する生徒」というものでした。しかし、あまり自分の意見を言わない生徒だとも感じていました。気遣いができるのですが、「そこまでしなくてもいいのに」と思う場面もありましたね。それでも3年生になると、自分を出しても良い所、そうではない所とバランスの取り方が分かるようになった印象を受けました。そうした成長を見て、安心したことを覚えています。しまね留学や部活での体験など、生活の全てから学び取ったのではないかと感じています。

猛練習と学業の両立に悩むなか感じた周囲の支え

――入学当初に不安だったことや、苦労したことを教えてください。

楠部さん:入学時に不安はなかったのですが、最も苦労したことは部活動と授業の両立です。朝は6時半に起きて、7時に点呼があります。朝食を済ませてから朝練をして、学校の授業を受けてから放課後の練習があります。午後8時40分の点呼までに寮に帰って食事と入浴を済ませ、掃除をしてから1時間半くらい自習をして寝る、という日々を送っていました。就寝は、夜中の12時半を回ることもありました。

福原先生:私自身が寮の舎監を務めることもありましたので、生活は本当に大変そうだと感じていました。朝練に出てから寮に戻って就寝するまで時間に追われている印象でしたね。ソフトボール部は特に練習が終わるのが遅いこともあり、ある意味厳しい環境だったと思います。

楠部さん:寮生活と部活動のバランスをどう取ればいいのか、行動のルーティーンをどう作れば良いのか分からず悩みました。高校1年生の時に部活の先輩が寮にいたら参考にできたのかもしれませんが、あいにく1人もいませんでした。

福原先生:自宅から通う生徒であれば、自分の時間を好きに使うことができます。寮では自分以外の生徒もいるため、気が休まらないのではないかと常に感じていました。「少しでも困ったことがあれば言ってほしい」と思っていましたが、なかなかそうした悩みは言えないものです。それでも「気を遣わず寮生活を送ることができれば」と気配りはしていました。

楠部さん:先生にはテスト期間や学校が休みの時、寮生活のことなど多方面で気にかけていただきました。帰省した際のことを話すこともあったのですが、気持ちが楽になりました。

――周囲の方々の支えを感じられたようですね。

楠部さん:本当にいろいろな方の支えがありました。例えば3連休や休日の際には、寮の食事が出ないことがあります。その日が遠征で練習試合に行く日と重なった時は、ソフトボール部の保護者の方に食事を用意していただきました。閉寮時などは、家に泊めさせていただくこともありました。

――ご自身でどのようなところに成長を感じられましたか。

楠部さん:ソフトボールのレベルも高くなりましたが、それ以上に、慣れない環境でストレスを感じながらも生活したことで、自立心が成長したことは大きかったと思います。

福原先生:教員の立場から見ていても実感するところです。もともと自立していましたが、より自立心に磨きがかかったと思います。

楠部さん:自立心は自分ががんばるだけで得られるものではなく、先生やチームメートなど周囲の支えがあって得られると感じています。

学びの大きかった寮生活

――3年間で最もこだわって取り組んだことを教えてください。

楠部さん:やはり部活動のソフトボールです。中学時代の最後の大会では、直前で怪我をしてしまい不完全燃焼だったので。中学・高校ともにピッチャーでしたが、自分が目立とうという意識はなく、常にチームの中で自分の最低限の仕事をしようと考えて取り組んでいました。

――そのように考え始めたのはいつ頃からですか。

楠部さん:高校2年生の頃からだと思います。1年生の時は練習について行くだけで必死でした。先輩の行動を見て覚えることだらけで、チームの中での役割などを冷静に考える余裕はありませんでした。2年生になったら後輩も入ってきたので、そうした自覚を持つようになりました。

――3年間を振り返って、自分自身を褒めたいと思うことはありますか。

楠部さん:3年間寮生活を送ったことです。時間厳守が想像以上に大変でした。今は時間の縛りが少ないですが、社会に出れば再び時間と向き合うことが多くなると思います。その際には、寮生活の経験を生かせたらと思っています。

福原先生:強い意志を持って親元を離れ、ソフトボール部での活動を貫いたこと自体に感心しています。それだけではなく、寮生活の中で学業と部活を両立させたことには尊敬すら覚えます。彼女は勉強も一生懸命に取り組んでいました。自分自身が同じ立場だったら、なかなかできないなと思います。


――実家を離れた寮生活で、どのようなことを学んだと思いますか。

楠部さん:集団生活の大変さと大切さを学びました。最後の1年間は寮長をやらせていただいたのですが、自分のことだけを考えるのではなく、周囲のことも気にしながら行動していました。

しまね留学は“地元ならではの良さ”を感じさせてくれた

――雲南市で好きな場所はありますか。

楠部さん:三刀屋川沿いにある河川敷です。桜が本当に素晴らしくて、担任の先生が写真を撮ろうとクラス全員を連れて行ってくれたこともありました。思い出深い場所です。

福原先生:「桜まつり」が行われる場所で、春の到来を感じさせてくれる場所です。

――学校の中ではどこでしょうか。

楠部さん:グラウンドです。自分が一番、汗を流したところなので。引退してからも眺めることが多かったです。

――しまね留学は、どのような意義があったと思いますか。

楠部さん:三刀屋に来てから「地元を大切にする方が多いな」と感じ、自分も地元について考えさせられました。支えてもらった人たちとの関係を築けたり、その後もアットホームな雰囲気で気軽に声をかけてくださったりするなど、“地元ならではの良さ”を感じた3年間でした。

福原先生:出身地以外にもう1つ故郷ができる、大人になった時に訪れる場所があるということが、しまね留学の魅力の1つだと思います。

――3年間で得たことをどのように生かしていきたいと思いますか。

楠部さん:寮生活の経験を生かして、集団の中での自分の役割を考えながら行動したいです。それだけではなく、ソフトボールで得た粘り強さや継続力を、今後の人生に生かしていきたいと思います。短大に進学しますが、高校時代と同じように挑戦する気持ちを大事にしたいです。

――しまね留学を考えている人に、どのようなメッセージを伝えたいですか。

楠部さん:不安に思う方も多いかもしれませんが、ここへ来たからこそ学べること、気付くことがたくさんあります。「いいところだよ」と伝えたいです。

 

 

学校情報

島根県立三刀屋高等学校

 

〒690-2404
島根県 雲南市 三刀屋町 三刀屋912-2
TEL : 0854-45-2721

 

学校詳細 : https://shimane-ryugaku.jp/mitoya-hs-2/